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投稿日: 弁護士 宮地 政和

偏頗弁済とは|債権者平等の原則に反する行為と回避方法について解説

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債務返済が滞り、毎月の支払いが困難になってしまった場合、債務整理を検討される方は多いと思います。
負債額や資産などの状況によりますが、借金総額に対して収入が不安定で資産もないなど、支払い不能状態になってしまうと、任意整理や個人再生が難しいため、自己破産手続を選択する方がほとんどです。自己破産手続開始の申立て後は、生活に必要な財産以外は破産管財人が収集・換価し債権者へ分配します。そのような中で、一部の債権者のみに借金を返済する行為は免責不許可事由となり、自己破産が認められなくなります。これを偏頗弁済(へんぱべんさい)といいます。
偏頗弁済行為をした場合、自己破産手続にどのような影響が及ぶのでしょうか。詳しく解説します。

偏頗弁済は債権者平等の原則に反する行為

1.偏頗弁済とは

自己破産手続開始の申立て後の債務者の財産は、生活する上で必要である最低限度の財産とされる自由財産以外のものを破産管財人が収集・換価し、債権者へ債権額に応じて平等に分配されます。そのため、自己破産手続開始の申立て後だけでなく、申立ての準備を開始した時より、特定の債権者に対してのみ返済することは許可されません。このように、自己破産の申立ての準備を開始した後に、特定の債権者への債務のみ弁済することを偏頗弁済(へんぱべんさい)といいます。偏頗弁済は免責不許可事由の一つで、破産法第252条1項3号に規定されています。

債権者の中に友人や親族が含まれている場合、「少額でも返済したい」という気持ちになるのではないかと思います。しかし、友人や親族であっても、自己破産の申立て準備を開始した後は、債権者の一人として平等に扱う必要があります。友人や親族から借りている借金だけを優先して返済した場合、債権者は平等であるという原則に反する行為だとして、自己破産の免責不許可事由に該当し、借金の返済義務免除が認められない可能性があります。

2.債権者平等の原則とは

前述した通り、自己破産手続開始の申立て準備開始後は、特定の債権者の債権のみを返済することは、免責不許可事由に該当する行為となるため許されません。特定の債権者にだけ返済をすると、それ以外の債権者は不利益を被ります。自己破産は、支払い不能状態となった債務者(破産手続開始決定以降は破産者)が、借金返済義務を免除されて借金から解放されることが目的ではなく、自己破産により経済生活の再生機会を与えることが本来の目的です。しかし、債権者は、本来返済されるはずの借金が返済されないという不利益を被ることになります。その上、自分以外の特定の債権者が返済を受けているとなれば納得できません。そのため、債務者が支払不能状態になり、自己破産の申立ての準備を開始した後は、勝手に資産等を処分することは認められません。全ての債権者に対して平等に対応することにより、債権者に自己破産による借金返済の免除に納得してもらい、応じてもらうのです。
このように、債権者の債務や返済について全ての債権者が同条件で平等であることを「債権者平等の原則」といいます。
債務者は、自己破産が認められると破産者となり、債権者に対して本来返済するはずの借金を免除してもらうことと引き換えに、生活する上で最低限必要とされる自由財産以外の財産は没収されます。没収された破産者の財産は破産管財人が収集・換価し、債権額に応じた金額を債権者へ平等に分配します。特定の債権者のみ優先して返済する偏頗弁済は、債権者平等の原則に反するため認められません
故意でない場合も、特定の債権者だけに支払うことは許可されません。例えば、自己破産の申立ての準備を開始した後、銀行口座から借金等の返済が自動で引き落とされた場合も、債権者平等の原則に反します。クレジットカードの支払いなどは、気づかないうちに引き落とされることもあるため注意が必要です。ただし、公共料金や税金は非免責債権であるため、自己破産しても支払う必要があり、債権者平等の原則には反しません。

3.債権者平等の原則の例外とは

債権者平等の原則には例外もあります。債権者平等の原則の例外として、支払うことが認められる債権について詳しく説明します。

①担保権が設定されている債権

担保権が設定されている債権については、担保権を持っていない債権者よりも優先して弁済を受ける権利があります。貸付をする時に債権を満額回収するために担保権を設定していた場合、担保権を設定していない一般債権者と同等の立場として弁済を受けるのは、むしろ不平等だといえます。
代表的な担保権の一つとして、自宅やビルなどの不動産を購入する際に組む住宅ローンについて、土地や建物に設定する抵当権が挙げられます。住宅ローンは借入れ金額が高額となる傾向にあり、担保権を設定しなければ回収不能になりかねないため、担保権を設定することが一般的です。

②税金・年金・健康保険料など公租公課

国や地方自治体に納める税金や、年金、健康保険料などを総称して公租公課といいます。公租公課は非免責債権であり、自己破産後も支払い義務が残ります。
また、税金、年金、健康保険等の滞納については「国税徴収法又は国税徴収の例によって徴収することのできる請求権」が適用され、一般債権とは違い、債務名義取得後の強制執行ではなく、滞納処分手続により国や自治体が回収することが可能です。

③損害賠償金

損害賠償金はその起因や悪意の有無のより異なりますが、損害倍署請求権については破産法第253条第2項、3項に以下のように定められています。

“2.破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
3.破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権(前号に掲げる請求権を除く。)(破産法第253条第2項、3項)“

損害賠償請求権に基づく賠償金の支払いについては、

  • 悪意で加えた不法行為
  • 故意または重大な過失により加えた人の生命または身体を害する不法行為

である場合は免除されません。悪意がなく故意でない場合は免除される賠償金もあります。また、損害賠償請求権については時効となるケースもあります。

④養育費

離婚などによる子供の養育費の支払いは、債権者平等の原則の対象となる債権には含まれません。養育費は非免責債権であることが法律で規定されています。

“4.次に掲げる義務に係る請求権
(イ)民法第七百五十二条の規定による夫婦間の協力及び扶助の義務
(ロ)民法第七百六十条の規定による婚姻から生ずる費用の分担の義務
(ハ)民法第七百六十六条(同法第七百四十九条、第七百七十一条及び第七百八十八条において準用する場合を含む。)の規定による子の監護に関する義務(破産法第253条第4項)“

偏頗弁済行為による自己破産手続への影響

偏頗弁済が発覚した場合、自己破産の手続にどのような影響が及ぶのでしょうか。具体的な影響について説明します。

1.免責が許可されない

偏頗弁済が発覚し、その行為が悪質であると判断された場合、免責が許可されない可能性があります。自己破産は、債権者に本来弁済すべきものを弁済せず、返済義務の免除を申請する手続なので、多くの資料の提出を求められ、破産管財人による調査も徹底して行われます。そのため、手続の途中で偏頗行為が発覚する可能性は高いでしょう。

2.同時廃止が認められない

自己破産の手続では、裁判所へ申立て後、裁判官との面接等を経て、特に問題がなければ破産手続開始が決定されます。その後、資産状況やその他の事情から、以下のいずれかの手続が行われます。

同時廃止 債権者に分配するほどの財産がなく、免責不許可事由に該当する可能性がある等の問題がない場合
管財事件 裁判所から選任された破産管財人による資産の調査、管理、処分などを行う必要がある場合

通常は同時廃止に相当する資産状況であっても、偏頗弁済が疑われるような事実が判明した場合、同時廃止手続が許可されず、管財事件として扱われることになります。

3.管財人による否認権の行使

偏頗弁済が発覚した場合、破産管財人は、その財産を回収して、全債権者へ平等に分配する必要があります。この回収行為は、破産管財人の権利である否認権により可能となる行為です。破産管財人が偏頗弁済行為について否認権を行使すると、偏頗弁済による財産は管財人により回収され、債権者への分配金に充当されます。
破産法第162条第1項には、管財人の否認権について以下のように定められています。

“次に掲げる行為(既存の債務についてされた担保の供与又は債務の消滅に関する行為に限る。)は,破産手続開始後,破産財団のために否認することができる。
1.破産者が支払不能になった後又は破産手続開始の申立てがあった後にした行為。ただし,債権者が,その行為の当時,次のイ又はロに掲げる区分に応じ,それぞれ当該イ又はロに定める事実を知っていた場合に限る。
イ 当該行為が支払不能になった後にされたものである場合
支払不能であったこと又は支払の停止があったこと。
ロ 当該行為が破産手続開始の申立てがあった後にされたものである場合
破産手続開始の申立てがあったこと。 “

つまり、破産管財人が偏頗弁済を否認するためには、偏頗弁済を受けた債権者が、破産者が支払不能な状態であること、または自己破産手続を開始していることを知っていた(債権者の悪意)という事実が必要です。

偏頗弁済の回避方法

自己破産をしても、親しい人やお世話になった人との今後の信頼関係を保つために、親族や友人には返済をしたいと思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。どうしても返済したい債務者がいる場合に、偏頗弁済を回避して返済する方法について説明します。

1.第三者による債権者への弁済

どうしても返済したい債務者がいる場合、親族や知人などの第三者に代わりに返済してもらうという方法があります。第三者が返済する場合は、破産者本人の財産が減少することはなく、債権者への分配金が減額されないため、偏頗弁済に該当することはありません。その際、債権者には第三者からの返済であることをしっかりと伝えておきましょう。
代わりに返済してくれる第三者がいない場合は、裁判所からの免責許可決定後に返済するとよいでしょう。免責許可決定後は、債務履行の義務は消滅するため、免責許可決定後に破産者の意思で、個別に債権者へ支払いをしたとしても、免責が取り消されることはありません。

2.自己破産以外の債務整理方法を検討

毎月安定した収入があるなど、一定の条件を充たす場合は、自己破産でなく任意整理を検討してもよいでしょう。
任意整理は、自己破産と違い、裁判所を介さない、個別の債権者と債務者による話し合いによる債務整理手続なので、対象となる債権者を選択して債務整理をすることができます。親族や友人からの借金のみを返済しても問題になることはありません。
ただし、自己破産のように債務の返済義務が免除されるわけではなく、減額が見込めるのは、ほとんどの場合は利息と遅延損害金のみとなります。

偏頗弁済に関するよくある質問と回答

1.偏頗弁済は隠せないのか?

自己破産手続では、免責確定後、債務者は借金支払いを全額免除されるため、債権者は本来受けるはずだった弁済を受けることができなくなります。そのため、多くの資料や書類を裁判所に提出し、虚偽の報告や公平性を欠く取引がないかなどを慎重に調査する必要があり、その後、免責許可の決定をします。また、同居人にも必要書類の提出が求められるケースがあります。

【自己破産手続で裁判所に提出する収支に関する主な書類】

  • 通帳(全ての口座、過去2年分程度)
  • 給与明細書
  • 源泉徴収票(課税証明書など年収がわかる資料)
  • 確定申告書
  • 家計収支表
  • 年金などの受給証明書
  • 退職金支給明細書・退職金に関する規定、資料
  • 自動車の車検証、今の価値が分かる査定書
  • 不動産登記簿謄本、土地家屋の権利書
  • 同居人の給与明細書/源泉徴収票(※ケースによる)

このように自己破産の免責許可を得るためには収支や資産について過去の取引も含めて詳しく調べられます。例えば、銀行口座での取引や書面上の記録と申立書の記載に相違点や不自然な点がある場合、偏頗行為を疑われ、説明を求められる場合があります。したがって、偏波弁済を隠し通すことは難しいです。

2.偏頗弁済が禁止される期間はいつからいつまで?

特定の債権者への偏頗弁済が禁止される期間は、以下のいずれかの時から、免責許可が決定するまでの期間です。

  • 支払不能状態となった時(債務者が自力で借金を返済することができないと判明した時)
  • 自己破産手続の申立てをした時

自己破産手続の申立て後、破産管財人による財産調査や配当手続などを経て免責許可が決定した後は、債務を返済する義務は消滅するため、それ以降は特定の債権者への弁済が偏頗弁済とはみなされません。

3.偏頗弁済をすると罰則を受けるのか?

免責決定により、債務者は借金返済の義務が消滅し、自己の経済活動や生活を立て直すことができますが、債権者にとっては元本か満額回収できなくなるというダメージをうけます。そのため、裁判所は多くの書類や資料をもとに偏頗行為とされる公平性を欠く行為がないかを慎重に見極め、免責許可について判断します。
免責不許可事由である偏頗弁済行為が判明した場合、以下のようなリスクがあります。

  • 免責が許可されない可能性
  • 免責が許可されたとしても同時廃止ではなく少額管財での手続になる可能性
  • 偏頗弁済と同等金額を請求される可能性

このように、特定の債権者へ返済をするなど公平性を欠く行為や悪意のある行為は厳しく対処されますが、罰則までは規定されていません。しかし、法人が破産手続で偏頗弁済をした場合、破産犯罪が適用され、刑罰を科される可能性もあります。破産管財人による否認権の行使では済まない可能性があるのです。また、返済期限の来ていないにもかかわらず弁済する偏頗行為は「特定債権者に対する担保供与等の罪」といわれる破産犯罪で、他の債権者を害する行為だとされています。その罪は重く、その行為をした債務者は1月以上5年以下の懲役または500万円以下の罰金が課せられる可能性があります。

まとめ

今回は、自己破産手続で注意が必要な偏頗返済について解説しました。自己破産手続は債権者にとって借金を一度リセットし、生活や経済活動の立て直しができるメリットのある債務整理手続です。しかし、一方で債権者は元本が満額回収できなくなるため、裁判所は様々な資料などから、免責許可について慎重に判断します。また、「債権者平等の原則」に基づいて、債権者間の公平性が保たれるように、債務者の収支や財産について厳格に調査して手続を進めいくため、偏頗弁済行為を隠すことはほぼ不可能です。偏頗弁済行為に関して不安な点がある場合は、債務整理に精通した弁護士に相談するとよいでしょう。
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弁護士宮地 政和 第二東京弁護士会
弁護士登録後、都内の法律事務所に所属し、主にマレーシアやインドネシアにおける日系企業をサポート。その後、大手信販会社や金融機関に所属し、信販・クレジットカード・リース等の業務に関する法務や国内外の子会社を含む組織全体のコンプライアンス関連の業務、発電事業のプロジェクトファイナンスに関する業務を経験している。