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投稿日: 更新日: 代表弁護士 中川 浩秀

既婚者とは知らずに妊娠してしまった場合の慰謝料請求について

「既婚者と肉体関係を持つことは許されないこと」

「既婚者と不倫すると、慰謝料を請求される」

この認識は多くの人が持っていることかと思います。

しかし、既婚者とは知らずに既婚者と肉体関係を結んだ場合はどうなるのでしょうか

最近ではマッチングアプリで、既婚者が既婚者という事実を隠して独身女性や独身男性と関係を持つという事例も増えているとのことです。

そこで、今回は独身の方が既婚者とは知らずに既婚者と関係を持ち、そこで妊娠してしまった場合の事例について解説していきます。

既婚者ではないと嘘をつかれていたのなら、たとえ不倫だったとしても、妊娠に対して慰謝料を請求することが可能です。

仮に配偶者から慰謝料を請求されても、それを断ることができます。詳しく解説していきます。

既婚者と知らずに関係を持ち妊娠してしまった…

独身だと思って交際していた相手が実は既婚者だった、妊娠してしまったがどうしたら良いのかわからない。

そのような場合にどういった費用負担を既婚者に依頼することができるのか、慰謝料の請求はどうなるのかを解説していきます。

結論から述べると、

  • 中絶した場合
    中絶費用は折半が基本だが、事情によっては中絶費用に加えて慰謝料を請求できる
  • 出産した子供の認知について
    父親に認知を求めることができるが、父親が既婚者の場合は任意には応じない可能性もある
  • 貞操権の侵害について
    本当に既婚者だと知らなかったのであれば、その既婚者に慰謝料を請求することができる
  • 既婚者の配偶者から慰謝料を請求された場合について
    本当に既婚者だと知らなかったのであれば、慰謝料を支払う必要はない

上記のような形になります。下記で詳しく説明していきます。

中絶した場合の費用負担について

まず、中絶した場合に関して説明します。

厚生労働省の衛生行政報告例の概況を参考にすると、中絶は一年間に16万件近く起きています。

非常に多くの人が中絶をしていることがわかります。

では、中絶の費用はどのように負担する必要があるのでしょうか。

基本的には半額ずつ

性交渉がお互いの合意の上であった場合には、中絶費用を相手方に強制的に支払わせる法的根拠はなく、一定の割合(通常は半額程度)での負担をお願いすることになります。

しかし、男性側の対応に非がある場合や合意のない性交渉だった場合には、慰謝料を請求するという形をとって、お金を請求することができます。

実際に、慰謝料を請求できそうなケースを紹介します。

  • レイプなど、合意の元ではなかった場合
  • 避妊していると嘘をつかれた場合
  • 性交渉中に暴力があった場合
  • 中絶するよう脅された場合

仮に慰謝料が請求できることになった場合には、損害賠償として慰謝料に加えて中絶にかかった費用を上乗せできるケースもあります。

このため、既に中絶してしまっている場合は、診療費用のわかる領収書などは手元においておきましょう

後々請求する際に証拠になります。

出産した子供の認知について

不貞行為の結果、妊娠した子を出産する場合には、親をどうするか決めなくてはなりません。

子供は母親の身体から生まれてくるため、生まれながら母親には親子関係が認められます。

しかし、母親に婚姻関係を結んでいる相手がいない以上、子供に父親はいません。

子供に父親が欲しいのであれば、性交渉の関係を持った男性に、子供を認知してもらう必要があります。

認知の効果と方法

父親が既婚者である場合、任意に認知に応じてもらえない可能性があります。

しかし、母親及び子にとっては認知してもらうことは効果が大きいです。

認知をしてもらうと、生まれた子供と既婚者の間に法律上の親子関係ができます。

つまり、戸籍には父親の名前が記載され、父親には、扶養義務が生じます

このため、養育費が請求できます

また、親の財産を相続することができます

父親の相続がマイナスの財産の相続となるときは相続放棄で対応できるので、養育費を請求できる恩恵の方が大きいといえます。

認知には複数の方法がありますが、一番簡単に行うことができるのが、「認知届」を父親に出してもらうことです。

市役所に行けば簡単に受け取ることができるため、父親にお願いしましょう。

しかし、父親が認知を拒否している場合は、調停や裁判を行っていく必要があります。

この場合は、厄介な法的手続が必要なため弁護士に依頼する必要があります。

男女トラブルに実績のある弁護士事務所を探し、依頼すると良いでしょう。

貞操権の侵害について

貞操権とは、性的な関係を結ぶ相手を自分で自由に選ぶ権利のことです。

自分が交際する人は自分で選ぶことができる権利です。

しかし、既婚者に「既婚者ではない」と騙されていた場合には、自分で交際する相手を選ぶ権利が侵害されていることになり、すなわちこれが、貞操権の侵害にあたります。

貞操権の侵害は慰謝料請求が可能

貞操権の侵害は、慰謝料請求が可能です。

しかし、この場合は、既婚者から独身であると騙されていたことを証明する必要があります。

真実は既婚者であることは戸籍謄本等で立証可能ですので、既婚であるにも関わらず既婚ではないという説明をしていたかという、「嘘」についての証拠があるかどうかが鍵となります。

慰謝料を請求する際は、以下に従って、証明方法を考えましょう。

相手が既婚者だと知らなかったことを証明する方法

「既婚者とは知らずに関係を持ってしまった」、「既に夫婦関係は破綻していると聞かされていた」と主張するだけでは、慰謝料の支払いを免れることはできません。

既婚者とは知らなかったこと、また知ることができなかったことを立証する必要があります。

相手が嘘をついていた証拠を確保する

相手が「私は独身だ」、「夫婦関係は完全に破綻していて別居中だ」などと嘘をついていた場合は、それが証拠になります。

また、出会いがマッチングアプリや出会い系サイト、SNSだった場合は、相手が独身であるという先入観を持ちやすいため、これらも証拠になります。

メールやLINEなどのメッセージで、「独身だ」、「離婚が決定している」などと言っていた場合は、スクリーンショットで証拠を残しましょう。

これらの証拠があれば、自分に故意や過失がなかったことを立証できる可能性があります。

状況的に知ることができなかったことを示す証拠を集める

「既婚者であることを知らずに関係を持っていたから慰謝料を支払う必要が無い」と主張するためには、既婚者であることを知ろうと思っても知ることができなかったことを証明する必要があります。

これは非常に難しいですが、先ほど同様、2人の出会いがマッチングアプリやお見合いパーティー、相席居酒屋などの、独身者を想定した出会いの場であったことを示すことができれば、「既婚者だと疑う余地がなかった」と判断してもらえる可能性があります。

逆に、2人が同じ職場の同じ部署で働いている、近所に住んでいるなどの「容易に既婚者であることを知ることができた環境」にいた場合には、難しいです。

慰謝料請求する方法

連絡が取れる場合は、連絡を取って慰謝料を請求したい旨を伝えましょう。

妊娠や中絶の事実があれば、慰謝料が高くなる可能性があります。

貞操権侵害による慰謝料請求の金額の相場は、数十万~100万円程度です

妊娠している場合は高額になるケースが多いため、弁護士に相談して、交渉を手伝ってもらうとスムーズでしょう。

慰謝料を請求された場合について

既婚者との間に子供ができたのであれば、主観的な認識はともかく、客観的には不倫の結果により妊娠にまで至ったということとなり、既婚者の配偶者から慰謝料を請求されてもおかしくありません

以下に該当する場合、慰謝料を支払う義務があります。

不倫の慰謝料を支払う必要があるケース

不貞行為があった場合

法律上で、慰謝料の支払いが必要になるのは、「不貞行為」があった場合です。

不貞行為とは、既婚者が配偶者以外の相手と性交渉等を行うことを指します。

性交渉等とは、性交渉やそれに類するオーラルセックスなどの行為です。

キスだけ、手を繋いだだけ、食事をしただけ、などの行為だけでは不貞行為とはみなされない可能性が高いです。

相手が既婚者であると認識していた場合

不貞行為は簡単に言えば夫婦生活の平和を侵害する不法行為です。

不法行為が故意、過失によって行われた場合に慰謝料の請求が可能になります。

故意とは、簡単に言えば「わざと」です

不貞行為の場合は、「既婚者と知りながら既婚者と性交渉を行うこと」が故意にあたります

「過失」とは、「認識してはいなかったが、簡単に気づくことができたのにそれをせずに」と考えてよいでしょう。

「既婚者だとは告げられなかったけど、左手の薬指に指輪がある」という場合は、少し考えれば既婚者ということがわかります。

すぐわかるにも関わらず、確かめようとしなかったことは「過失」といえるでしょう。

この「故意」と「過失」のいずれかが認められれば、慰謝料を支払う必要があります

故意や過失がなかったことを立証できれば、慰謝料を支払う必要はなくなります。

相手夫婦の婚姻関係が不貞によって破綻した場合

不貞行為の慰謝料は、不貞行為によって平穏な夫婦関係が破壊された場合に支払う必要があります

不貞行為以前に、正当な理由が無く別居をしていたなど、夫婦関係が破綻していた場合は、慰謝料を支払う義務は生じません。

また相手が「夫婦関係は破綻している、離婚の話し合いが進んでいる」と話していて、それを疑う余地がなかった場合も、慰謝料の支払いを免れる可能性があります。

請求された場合の対応方法

不貞行為の慰謝料の請求文書が、内容証明郵便で送付された場合は、慌てずに以下のように行動しましょう。

すぐに慰謝料を支払う必要はない

内容証明郵便には、慰謝料の支払いを強制する力はありませんので、すぐに支払いに応じる必要はありません。

まずは、内容証明郵便に記載されている、請求の事実と、慰謝料の金額等を確認しましょう。

支払期日が明記されていてもその期日に支払わなかったからといって、すぐさま財産が差し押さえられることはありません

ただし、無視をしていると裁判を起こされるリスクがありますので、なんらかの反応を示す必要があります。

相手が既婚者であることを知らなかったことを伝える

慰謝料の請求者は、あなたが相手が既婚者であることを知らずに関係を持っていたことを知らない可能性がありますので、「既婚者とは知らなかった」ということを伝えましょう。

伝える方法は、郵送で「回答書」を送付することが望ましいです。

内容証明郵便で回答書を送付すれば、「回答されていない」、「無視された」という相手の主張を退けることができます。

回答書の例は以下で解説しています。テンプレートもあるので、参考にしてください。

まとめ

既婚者と肉体関係を持つことは許されない行為ですが、既婚者とは知らずに肉体関係を持ち、そこに過失がなかった場合は、慰謝料を支払う必要はありません

既婚者とは知らずに性交渉等を行い、相手の配偶者から慰謝料の請求を受けた場合は、狼狽せずに請求内容を確認した上で、既婚者であることを知らなかった旨を請求者に伝えましょう。

ご自身で伝えることが難しい場合、回答書の作成方法がわからない場合は、弁護士にご相談ください

また、妊娠や貞操権の侵害の慰謝料請求も同様に弁護士にご相談いただけます。

個別の状況を考慮して、適切にアドバイスすることが可能です。

場合によっては、あなたが相手に対して多額の慰謝料を請求できる可能性もありますので、まずは弁護士に相談しましょう

代表弁護士中川 浩秀 東京弁護士会
2010年司法試験合格。2011年弁護士登録。弁護士法人東京スタートアップ法律事務所の代表弁護士。同事務所の理念である「Update Japan」を実現するため、日々ベンチャー・スタートアップ法務に取り組んでいる。