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投稿日: 更新日: 代表弁護士 中川 浩秀

酔って暴力事件を起こしてしまった場合の対処法│覚えていなくても逮捕される?

お酒に酔って暴力事件を起こしてしまった場合、どのような罪に問われるのでしょうか。

酔っぱらっていて事件を起こしたことを覚えていない場合も罪に問われるのでしょうか。

今回は酔って暴力を振るってしまった場合の罰則や対処法を事例付きで詳しくご紹介していきます。

酔って暴力を振るってしまった場合の罪や罰則

暴力事件は暴行罪や傷害罪に問われる

お酒に酔って人を殴るなどの暴力事件を起こしてしまった場合、暴行罪もしくは傷害罪に問われる可能性があります。

暴行罪は刑法第208条、傷害罪は刑法第204条で以下のように規定されています。

第二百八条(暴行)
暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、二年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
第二百四条(傷害)
人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

殴る蹴るといった暴力を振るった結果、相手が怪我をしなかった場合は暴行罪に問われます。

相手が出血する、骨折する、打撲を負うなどの怪我をした場合は傷害罪に問われます。

また、通報を受けて駆けつけた警察官に暴力を振るった場合は、公務執行妨害罪で現行犯逮捕されてしまう可能性もあります

暴力を振るった場合の罰則

お酒に酔って暴力を振るった場合に問われる可能性のある罪の罰則は以下の通りです。

罪名 罰則
暴行罪 2年以下の懲役、30万円以下の罰金
拘留または科料
傷害罪 15年以下の懲役または50万円以下の罰金
公務執行妨害 3年以下の懲役、禁錮
または50万円以下の罰金

暴力を振るった結果、相手に怪我を負わせてしまう傷害罪に最も重い罰則が科せられます。

また暴行罪の罰則にある「拘留または科料」について、「拘留」とは「1日以上30日未満刑事施設に拘置する」ことを指し、「科料」とは「1,000円以上1万円未満を支払う」ことを意味します。

酔った状態での暴力は罪が軽くなる?

お酒に酔った状態での暴力は、通常の状態での暴力に比べて罪が軽くなるということはあるのでしょうか?

また、酔っぱらっていて記憶がない状態で暴力を振るってしまった場合も逮捕されてしまうのでしょうか?詳しく説明していきます。

酔っぱらっていても罪が軽くなることはない

酔っていても責任能力は認められる

暴力を振るうという行為に及んでしまった加害者の刑事処分を決定する際に考慮されるのが、その人の「責任能力」の有無です。

例えば精神障害のある人が心神喪失と判断されて無罪になることがありますが、それはその人に責任能力がないと判断されるためです。

責任能力とは具体的に、物事の善悪を判断する能力とその分別に従って行動する能力を指します。

一般的に、酔っぱらっていたという“だけ”では責任能力が否定されることはありません

暴力を振るうまでに至る程飲んだ自己責任ということで、無罪という判断は下されにくいと言えます。

ただし、あまり多くはないですが、極度に酔ってしまうと無罪になる場合もあるでしょう。

以下で詳しく説明します。

記憶がない・覚えていない場合でも逮捕される?

では、記憶を失うほど酔っぱらっている状態でも責任能力は認められるのでしょうか?

アルコールで酔った状態を酩酊状態と言いますが、酩酊状態の程度によって責任能力が認定されるか否かが判断されることが多いです。

酩酊状態の程度は「単純酩酊」「複雑酩酊」「病的酩酊」の3つに分類されます。

単純酩酊の場合

単純酩酊は通常の「酔っぱらって気持ちがいい」「顔が少し火照ってきて上機嫌」程度の状態を指します。

「今日は少し飲み過ぎてしまった」という場合も、会話のキャッチボールなどができていれば単純酩酊に分類されます。

単純酩酊の場合、人によって、感情が不安定になる(泣き上戸や笑い上戸)、人柄が変わるということはあっても、暴力を振るっても良いのかどうか、その善悪の判断はつきます。

このため、単純酩酊の状態で人に暴力を振るった場合、その人の責任能力は完全に認められ罪に問われます

複雑酩酊の場合

複雑酩酊は、アルコールによって著しく興奮をしている状態を指します。

「会話がままならない」「勝手に1人で踊り出している」「勝手に寝始めて大きな音を立てても一向に起きない」「ほぼ完全に理性がない」状態の人はここに分類されます。

複雑酩酊の場合、記憶は断片的になっていることが多いですがおおよその記憶は保持されています。

そのため限定的に責任能力が認められるという傾向があります

と同時に、複雑酩酊では心神耗弱が認められる傾向にあります。

心神耗弱は是非善悪を判断する能力、またはその判断に従って行動する能力が著しく低い状態を指します。

心神耗弱が認められた場合は、刑法第39条「心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する」とあるように刑が軽くなる可能性が高いです

病的酩酊の場合

病的酩酊は、アルコールによって意識障害や幻覚妄想症状が生じ、自分がどこにいるのかが分からなくなる状態を指します。

「危険な道路でいきなり寝始める」など状況の危険察知能力が全くない場合などが該当します。

自分の状況や周囲の状況を認知することが困難になり、不可解な言動を繰り返します。

この状態では責任能力が欠けていると判断され、心神喪失が認められる余地があります。

心神喪失は善悪を全く判断できないか、もしくは判断した通りに行動することができない状態を指します。

心神喪失が認められた場合は、刑法第39条「心神喪失者の行為は、罰しない」とあるように、無罪になる可能性もあります

【酔って暴力事件を起こし逮捕された事例】

酔った状態で面識のない男性を数回殴った事例

繁華街の路上で酒に酔った状態の男性が面識のない男性の顔を数回殴り、全治1週間のけがを負わせた事件。

男は傷害容疑で逮捕されました。

酒に酔って女性に暴行

2019年4月、人気歌手として活躍中の方が酔っぱらって面識のない女性に平手打ちをし、暴行容疑で逮捕された事件。

その後不起訴処分が確定しました。

酔って暴力事件を起こしてしまった場合の対処法

お酒に酔って暴力事件を起こしてしまった場合、どのように対処するべきなのでしょうか?

反省の意思を表明する

暴行について記憶があるのであれば、暴行の事実を認め、反省の意思を表明することが大切です。

暴行態様が比較的軽微であり、容疑を認めている場合には、勾留されずに早期釈放されることも多いためです。

自分が暴力を振るったことを覚えていない場合は、何を話すべきか、まずは弁護士に相談することをおすすめします。

事件当時の状況を早急に整理する

事件当時の状況(記憶がない場合は事件に至るまでの経緯)をできるだけ早く整理することも重要です。

被害者に謝罪をしたり、示談交渉を進めたりするうえで、当時の状況を詳しく知っておかなければいけないためです。

暴力トラブルはすぐに弁護士に相談

暴力事件を起こしてしまった場合、不起訴処分等の有利な処分を獲得するために、被害者との示談交渉など早急にやるべきことがたくさんあります。

酔って暴力事件を起こしてしまった場合はまず当時の状況を思い出して整理する段階から始めなければなりません。

酔っぱらって暴力を振るってしまった場合は、事件後すぐに弁護士に相談し、今後のアドバイスをもらったり、被害者との示談を進めてもらったりすることをおすすめします。

まずはお気軽に弁護士にご相談ください。

代表弁護士中川 浩秀 東京弁護士会
2010年司法試験合格。2011年弁護士登録。弁護士法人東京スタートアップ法律事務所の代表弁護士。同事務所の理念である「Update Japan」を実現するため、日々ベンチャー・スタートアップ法務に取り組んでいる。