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投稿日: 弁護士 徳山 紗里

警察に逮捕された後の刑事手続の流れ・家族が行うべきことは?

ある日突然、家族が逮捕された場合には、気が動転してしまい、何をしていいかわからないという方は多くいらっしゃいます。しかし、家族が逮捕された場合は、勾留されることを防ぐためにも早急に適切な行動を起こすことが大切です。

今回は、警察が被疑者を逮捕する目的と法的根拠、警察に逮捕された場合の刑事手続の流れ、家族が警察に逮捕された場合に行うべきことなどについて解説します。

警察が被疑者を逮捕する目的と法的根拠

法律上、警察官は犯罪行為が行われた疑いがある場合に、犯人及び証拠の特定・確保等必要な捜査を行います(刑事訴訟法第189条第2項)。捜査の目的上、必要な場合には、被疑者に対して警察署への出頭を求めて取調べを行うことも認められます(被疑者取調べ:同法第198条1項)。被疑者取調べ自体は任意で行うことも可能ですが、任意取調べの場合、被疑者は出頭を拒むことや出頭後に退去することが可能です(同但書)。

逮捕は、捜査の目的を果たすために必要がある場合に行われます
しかし、警察という公権力が私人を逮捕するという行為は、身体拘束という権利侵害を伴う強制処分にあたります。そこで、逮捕にあたってはその根拠となる刑事訴訟法上の特別の定めがあることが必要とされています(同法第197条第1項)。この特別の定めにあたるのが、刑事訴訟法の以下の3つの条文です。

  • 逮捕状による逮捕の要件を定めた第199条1項
  • 現行犯逮捕に関する第213条
  • 緊急逮捕の要件を定めた第210条

憲法第33条が「何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、かつ理由となっている犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。」と定めているように、逮捕という強制処分は、裁判官(司法権力)が発する、逮捕理由を明示した逮捕状に基づく通常逮捕によることが原則です(令状主義)。現行犯逮捕はその例外となります。急速を要する特定の場合に逮捕状なく逮捕する緊急逮捕の場合は、逮捕後ただちに逮捕状請求手続を行わなければなりません。

なお、刑訴法上の罪には、刑法の条文で定められた犯罪行為の他、会社法や労働法等の民事法や道路交通法等の行政法規の中の罰則規定に該当する行為も含まれます。

警察に逮捕される場合とは

警察に逮捕されるのは法令違反行為を行った疑いがある場合で、現行犯逮捕、警察が請求し裁判所が発行する逮捕状による逮捕、緊急逮捕の3つのケースがあります。それぞれのケースについて説明します。

1.法令違反容疑(犯罪容疑)の現行犯の場合

現行犯とは、犯罪行為を行っているところ、またはその直後を現認された状況を指します。刑事訴訟法上「現行犯」という概念に対する定義はありませんが、現行犯人については「現に罪を行い、または現に罪を行い終わった者」と定義されています(同法第212条1項)。
加えて、同条2項は、以下のいずれかにあたる者が罪を行い終わってから間もないと明らかに認められる場合を「現行犯人とみなす」と定めています。

  • 犯人として追呼されている
  • 盗品または明らかに犯罪の用に供したと思われる凶器その他の物を所持している
  • 身体または被服に犯罪の顕著な証跡がある
  • 誰何されて(呼び止められて)逃走しようとする

現行犯人は、警察官や検察官以外の何人でも逮捕状なくして逮捕することが認められています(同法第213条)。
たとえば、自分の所有物を目の前で壊される、汚されるなどの器物損壊事件で、被害者本人が現行犯人を逮捕することができます。その現場に居合わせた目撃者が犯人を現行犯逮捕することも可能です。また、警備会社の警報装置が作動して駆けつけた警備員が侵入者を現行犯逮捕することも適法です。

ただし、軽微事件(原則として30万円以下の罰金、拘留または科料に当たる罪)の現行犯人については、何人も逮捕状なくして犯人を逮捕できる等の現行犯逮捕関連規定(同法第213条~第217条)が適用されるのは、犯人の住居もしくは氏名が明らかでない場合、または犯人が逃亡するおそれがある場合に限られます(同法第217条)。

2.犯罪行為容疑で逮捕状が発行されている場合

警察が逮捕状によって被疑者を逮捕できるのは、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合です(刑事訴訟法第199条1項本文)。また、逮捕状が請求された後、裁判官が「明らかに逮捕の必要がない」と判断した場合は、裁判官は逮捕状請求を却下することができます(同法第199条2項但書)。逮捕の必要がない場合とは、具体的には、被疑者を身体拘束する必要がない場合、すなわち被疑者逃亡や罪証隠滅のおそれがない場合を指します。

また、原則として30万円以下の罰金・拘留または科料に当たる罪の容疑の場合は、被疑者が定まった住居を持たない場合や正当な理由なく出頭の求め(同法第198条1項)に応じない場合に限り逮捕状発行が認められます。

以下では、逮捕状が発行されていることを前提に被疑者が逮捕される場合について説明します。
なお、逮捕状によって被疑者を逮捕する場合、警察官は必ず逮捕状を被疑者に呈示しなければなりません(同法第201条1項)。

①親告罪の場合

親告罪とは、刑法の規定上、告訴がなければ公訴を提起することができないと定められている犯罪を指します。
親告罪の例として、以下のような犯罪が挙げられます。

  • 未成年者略取誘拐罪(刑法第224条)
  • 名誉棄損罪(同法第230条)
  • 侮辱罪(同法第231条)
  • 器物損壊罪(同法第261条)
  • 信書隠匿罪(同法第264条)

親告罪の場合、告訴権者が刑事訴訟法第235条の告訴期間内に告訴した場合は告訴を受けた警察から検察官に書類・証拠物が送付されます。警察は告訴の内容により逮捕の理由と必要性があると判断すれば被疑者を逮捕します。

親告罪の事件は、軽微であるか、または被疑者のプライバシー保護の必要があるため、告訴がなければ逮捕される可能性は高くありません。ただし、告訴は公訴提起の要件であって逮捕の要件ではありません。たとえば、器物損壊事件の被害届が出ている場合、告訴を待たずに器物損壊罪(刑法第261条)容疑で逮捕される可能性はあります。

②非親告罪の場合

非親告罪の事件では、告訴によらずに被疑者を起訴することが可能なので、一般的に親告罪に比べると逮捕される可能性は高くなります
ただし、犯罪によっては被害者のプライバシー保護の必要や過度の警察介入を避ける必要があるため、事実上被害届が提出されていなければ逮捕されない犯罪もあります。その例としては業務上横領罪(刑法第253条)があります。

3. 緊急逮捕が行われる場合

現行犯以外の場合でも、被疑者が行った行為が死刑・無期懲役・長期(刑の上限)3年以上の懲役・禁錮にあたる罪に該当することを疑うに足りる充分な理由がある場合で、急速を要する場合はその理由を告げた上で逮捕状によらずに逮捕することが可能です(緊急逮捕:刑事訴訟法第210条)。
ただし、この場合は、現行犯逮捕のような憲法上認められた令状主義の例外にはあたらないので、逮捕後直ちに逮捕状請求手続を行わなければなりません(同条)。

警察に逮捕された場合の刑事手続の流れ

前述した通り、警察がある犯罪事実を認知した場合、その判断によっては任意の取り調べを行い、犯罪行為が軽微である場合は逮捕せずに釈放します。
また、任意取り調べ段階で捜査を継続する必要があると判断した場合でも、被疑者逃亡や証拠隠滅のおそれがないと判断すれば被疑者を逮捕せず、在宅で取調べ等の捜査を継続します。

被疑者が逮捕され、公訴提起(起訴)される場合は正式起訴と略式起訴のどちらかに拠ることとなり、行われる裁判手続が異なります。ただし、罰金刑が定められていない犯罪(法定刑が死刑・無期及び有期懲役刑のみの犯罪)の場合は正式起訴による裁判手続のみが行われます。

1.現行犯の場合

現行犯で逮捕された場合(刑事訴訟法第212条)の手続の流れは次のようになります。

①捜査機関(警察)への引き渡し

私人が現行犯人を逮捕した場合は、直ちに捜査機関(検察官もしくは司法警察職員、通常は後者)に引き渡す必要があります(同法第214条)。

②被疑者取り調べ・送検・勾留の決定

逮捕された被疑者に対して警察官(司法警察員、同法第202条)が取り調べを行い、逮捕理由とともに弁護人をつける権利(憲法第37条3項、刑事訴訟法第30条以下)を告知します。

警察は被疑者を拘束してから、留置の必要がないと判断した場合は直ちに被疑者を釈放し、必要があると認める場合は48時間以内に検察官に送致します(刑事訴訟法第203条1項)。
送検された場合、検察官は留置の必要があると認める場合は被疑者を受け取った時から24時間以内に裁判官に対して勾留請求し、必要がないと判断した場合は直ちに被疑者を釈放します(刑訴法第205条1項)。なお、親告罪の事件で被疑者が現行犯逮捕されている場合はこの期間内に告訴が行われていますが、被害届が出ていても告訴がない場合は勾留請求できないか、あるいは裁判所側が勾留を認めない可能性が高いです。

被疑者拘束から検察官の勾留請求までの72時間の間は、被疑者は弁護人以外と会うこと(接見)ができません。なお、この段階で被疑者と接見することができる弁護人は被疑者またはその家族等の依頼を受けた私選弁護士または当番弁護士に限られます。当番弁護士としての無料の接見は1回のみ可能です。

裁判官が勾留を認めた場合、勾留期間は勾留請求した日から10日間です(刑事訴訟法第208条1項)。また、検察官が勾留延長を請求したときは、裁判官はやむをえない事情があると認める場合はさらに10日間までの延長を認めます(同法同条2項)。したがって、勾留期間は最大で20日間です。

被疑者が勾留されずに釈放された場合は在宅で捜査が続きます。この場合は捜査期間に制限はありませんが、被害者側が告訴を取り下げた場合、刑事手続は終了します。

また、被疑者を勾留するかしないかにかかわらず、被害者や目撃者に対しても取り調べが行われるとともに、裁判所が検察官の請求により捜索差押令状を発行した場合は被疑者の家宅捜索・差押が行われます(憲法第35条2項、刑事訴訟法第218条1項)。

③勾留

勾留中は検察官による取り調べが行われます。また、被疑者が経済的事情その他の理由によって弁護人を選任することができない場合は、裁判官によって国選弁護人が選任されます(刑事訴訟法第37条の2)。

④起訴・不起訴の決定

勾留期間中または在宅での捜査中に検察官は被疑者の起訴・不起訴の処分を決定します。
不起訴処分(刑事訴訟法第248条)が決定された場合、捜査手続は終了し、被疑者は釈放されます。
起訴する場合(同法第247条)、検察官は裁量により正式公判請求または簡易裁判請求のいずれかを行います。

⑤正式裁判の公判手続

被疑者が起訴された場合、地方裁判所の公開の法廷(公判廷、刑事訴訟法第282条)で公判手続が行われます。
なお、起訴された被告人は刑事訴訟法第60条の要件を満たす場合に、公訴提起から2か月の間裁判所により勾留されます(決定により延長可能)。
しかし、被告人は逮捕以来長期にわたり勾留されているため、健康状態が悪化するおそれや経済・社会生活上の不利益を被る程度が大きいので、本人や弁護士、家族等一定の保釈請求権者による保釈請求が認められています(同法第88条)。
保釈は刑訴法第89条または第90条で定める要件を満たす場合に、保釈請求者または裁判所が認めるそれ以外の者による保証金納付が行われることを条件に認められます。

2.通常逮捕の場合

現行犯以外の場合は、警察が裁判所に逮捕状を請求し、逮捕の理由と必要性が認められれば裁判所の発行する逮捕状(刑事訴訟法第199条1項)による逮捕が行われます。
逮捕の必要性は、前述した通り、被疑者が逃亡するおそれや罪証を隠滅するおそれがある場合に認められます。このため、被疑者の住所が明らかで証拠隠滅のおそれもない場合には逮捕の必要性がなく、在宅のまま取調べ等の手続が行われます。

逮捕状が発行されて被疑者が逮捕された場合のその後の手続は現行犯逮捕の場合と同じです。

なお、本項目冒頭で述べたように刑訴法第210条の要件を満たしている場合に逮捕状によらない逮捕(緊急逮捕)が行われます。この場合は逮捕直後に逮捕状請求しなければならず、裁判官が逮捕状請求を却下した場合は被疑者を直ちに釈放しなければなりません(同条)。逮捕状が発行された場合のその後の手続は通常逮捕の場合と同じです。

3.略式起訴の場合

事件が比較的軽微である場合、検察官の判断により略式命令請求(略式起訴、刑事訴訟法第462条)が行われます。
略式起訴が行われた場合、簡易裁判所で公判によらない略式裁判が行われます。
略式裁判では原則として検察官の提出した資料のみに基づいて、公判を開かずに略式命令(同法第461条)により罰金または科料が課されます。

家族が警察に逮捕された場合に行うべきこと

犯罪容疑で逮捕されてしまった場合は、本人は電話やインターネットを利用できなくなるので、警察から連絡を受けた家族がすぐに弁護士に相談することが最善の道です。

1.逮捕されたら可能な限り翌日までに弁護士に相談を

本人が容疑を認めるか否認するかにかかわらず、まず勾留されることを防ぐために逮捕から送検までの48時間以内に弁護士に相談して下さい。
この場合は弁護人を選任する必要が切迫しているので、相談後すぐに接見を依頼することをおすすめします。刑事事件を得意とする法律事務所の多くは24時間365日、電話による相談を受け付けています。また、初回の接見はほぼ全ての事務所で有料としていますが、着手金が発生する正式依頼を初回接見後としている事務所が多いです。
(参考記事:家族が警察に逮捕された際に弁護士を呼ぶべき理由と弁護士の選び方 *2021年5月納品)

2.弁護士費用の支払いが厳しい場合

逮捕された場合の弁護士費用は着手金・成功報酬を併せて50万円以上になることが多いです。クレジットカード等による分割払いが可能な法律事務所もありますが、刑事事件の場合は無条件に分割払い可能な法律事務所は少ないです。ただし、相談次第で分割払いが可能になる場合もあります。
刑事事件でも弁護士費用の分割払いが可能かどうかは最初に相談する時に費用の話の中で問い合わせることができます。

なお、逮捕された被疑者が経済的な事情により私選弁護人を依頼することができない場合、勾留状が発布される(勾留請求が認められる)前に限り、弁護士会が費用を立て替え払いして私選弁護人を選任する刑事被疑者弁護援助という制度を利用するという方法があります。この制度を利用する場合、弁護士費用は原則として返済する必要がありますが、経済的な事情により返済が困難な場合は免除されることもあります。

まとめ

今回は、警察が被疑者を逮捕する目的と法的根拠、警察に逮捕された場合の刑事手続の流れ、家族が警察に逮捕された場合に行うべきことなどについて解説しました。

被疑者が逮捕された場合は本人がインターネットや電話を利用できなくなるので、可能な限り翌日までに家族が弁護士に相談することをおすすめします。

私達、東京スタートアップ法律事務所は、刑事事件で逮捕されたなどの問題を抱えているご本人やご家族の気持ちに寄り添い、ご本人の大切な未来を守るために全力でサポートさせていただきたいと考えております。検察官や捜査機関の考え方を熟知している元検事の弁護士を中心とした刑事事件に強いプロ集団が、ご相談者様の状況やご意向を丁寧にお伺いした上で的確な弁護戦略を立て、迅速に対応致します。秘密厳守はもちろんのこと、分割払い等にも柔軟に対応しておりますので、安心してご相談いただければと思います。

弁護士徳山 紗里 東京弁護士会
京都女子大学法学部卒、東京スタートアップ法律事務所入所。日本で唯一の女子大法学部を卒業し、卒業生で初の弁護士となる。